
甲府の街
以前の「はじまり」と言う投稿で載せた古い集合写真は75年程前の甲府の連雀問屋街。中心に座っているのが初代の私の曽祖父で、祖父は当時戦争で出兵していたので写っていない。 数年前に道路拡張の為曽祖父の家は取り壊されたのだがその際発掘調査が行われ、それを見に行った。発掘されたのは...

着物考
数年前に黒の長羽織を誂えた。 紋屋にいると言うことが大きな理由の一つかもしれないが、過去に何度も流行り廃りのある黒の羽織を、そうだと知らなければ今の着こなしに目新しく感じたということがあった。 着用する場は限られるが、一つ紋を入れて貰った。...

祝い着
我が子が生まれた時、お宮参り用にオリジナルの祝着を作った。 着物自体は小さいものなので柄は入れずぼかしのみでシンプルに、その分背紋を紋屋としてこだわろうと決め、まず日々の服の似合う色の系統から着物の地色は青みのピンク、裾には足長のぼかしを紫で入れ、背紋は定紋の周りを誕生花の...

染物とデザイン
少しマニアックな話かもしれない。そもそものわたしのデザイン専門分野は商業的な印刷物のデザインである。 染物のデザインをする際、紙と同じ感覚でデザインしてしまうと、どうにも違和感が生じる。 それは何故かと、色々試してきた上で、大まかに理由を考えてみたところ、印刷物は平面的で、...

紺屋の明後日
「紺屋の明後日」とか「紺屋の白袴」ということばがある。 紺屋とは染物屋のことで、両方ともルーズな感じの意味で私にもかなり当てはまってしまう。 ルーズさの原因は私の性分もあるが天候による部分もある。 引き染めの作業は気温と湿度にとにかく左右される。...

暖簾をくぐる
生まれた頃から着物に囲まれ過ごしてきた夫と比べると、わたしは真逆で、30歳を越えるまで日本の文化に意識して触れてみることなく過ごしてきた。 20代は海外への憧れもあり、面白いと感じたのは違いがわかりやすい異文化だった。その頃に少しだけ海外での生活も送ったけれど、海を渡ってか...

目印
幼い頃よく迷子になった。 私の兄は連れて行ってくれるのだが連れて帰ってくれないのだから迷子になるのもしょうがない。 2,3歳の頃家族旅で訪れた飛騨高山の朝市で迷子になり、泣いていた私はパトカーに乗せてもらい、何の手がかりもない中、家族を探してもらっていた。...

春ははじまり
室礼(しつらい)という好きな言葉がある。言葉の響きが綺麗だし、字面を見ても背景に澄んだ空気みたいなものを感じられてとても好ましい。 意味は簡単に言ってしまうと、準備をするということなんだけど、もう少し丁寧な説明になると、おもてなしの心を込めて形をつくり、人を迎える準備をする...

はじまり
家業は紋章上絵業だ。 着物に家紋を描き入れる仕事である。 私で四代目になるので明治40年頃の始まりらしいがはっきりはしない。 初代は甲府の連雀問屋街、そこから自転車で10分程下った場所に二代目から移って今に至る。 連雀問屋街は今から40年程前までは繊維の問屋を中心に賑わって...

西染物店のこれまでとこれからのこと
コロナ禍で実際に人と会うことが難しい日々が続いている中、西染物店としての取り組み方を模索して3年目の春を迎えました。 今までのように展示会を通して、実際に作品を見て貰えることが、語らずもわたしたちの姿勢というものを感じ取って貰える方法でしたが、まだ不安定な世の中では大手を振...