

着物考 その四 ゆかたがわり
今年も当然のように猛暑の夏がやってきました。 着物も気候に合わせ、着用においての決まりごとは柔軟にならざる得ないところです。 「ゆかたがわり」という言葉があります。元々は浦澤月子さんの著書の中で見つけました。 暑い中、おしゃれも大変なので涼しげに気楽に装いましたという着物のことを指します。謙譲の美を感じさせるきもののことと著書にも書かれています。 とても素敵な言葉だと思い、そのように装える夏着物を数年前から作っていますが、夏が酷暑になるにつけ、素材のメンテナンスのしやすさということは、ことのほか重要ではないかと思っています。 空調が効いている屋内だけで過ごす場合は別として、夏の外出にはどのようにしても汗をかきます。 絹ものの素晴らしさはもちろん別格ですが、残念ながら丸のまま水で洗うということはできません。 麻や綿など、この季節は水でジャブジャブ洗うことができる素材というのは着用の安心感にも繋がります。気持ち良く着れるというのも大切なことです。 夏の着物は見た目ほど涼しくはありませんが、とても風情を感じるもの。 カジュアル過ぎず、涼しげに気楽に。夏


【出展】色匂ふ様主催 FIRE WORKS at 神楽坂フラスコ
本日より当方のストールを出品させていただいております。 ※在廊予定はございません。 夏に涼しげなガラスの作品をぜひご覧ください。 詳しくはこちらよりご確認ください。 https://www.ironihofu.com/ 「FIREWORKS」展 [ 会 期 ] 2022年6月24日(金)~28日(火)
[ 会 場 ] 神楽坂 フラスコ神楽坂さま(http://www.frascokagura.com)
5人の男性ガラス作家の思う花火
神楽坂にて鮮やかに艶やかに打ち上げます
[ 参加作家 ]
・ガラス:伊藤太一/小寺暁洋/小西潮/佐々木俊仁/須藤泰孝
・染物:西染物店


苧麻
前回も触れたのだけど手績みの苧麻の話。 苧麻や大麻は縄文時代から木綿の栽培が普及する江戸時代頃まで布などの素材としてよく使われた。 正倉院展でも上着や肌着など毎回なにかしら展示されている。 苧麻は現代でも線路脇や土手など身近な所にわりと生えている。 繊維は茎の芯と外皮の間にあり、他の植物の繊維は取り出すのに発酵や灰汁だきをしなくてはならないが苧麻は水につけるだけですぐ取り出せる。 苧麻が広く普及したのはそれらが要因だと思う。 取り出したばかりの繊維は光沢のある薄緑でとても清々しい色。 苧麻は麻の中でも特に強く硬い。麻を扱う工房にいた頃は人差し指と親指の指紋が無くなった程だ。 伸び縮みもしないので織る際も居座機(いざりばた)という織り手が腰を使って経糸の張りを調節する機で織られる。 繊維の取り出し方や糸の作り方、織り方は奈良時代頃から江戸時代までほぼ変わっていない。 苧麻布が衣類に使われ始めた頃は硬く着づらいものだったと思う。 時代を経て栽培の仕方や繊維の選別、それに打つ、晒す、踏む、アルカリで炊くなどの各産地独自の加工により、薄くさらりとした「上


着物考 その三 四十路コーディネート
四十路を迎えたら、着物を見る目が変わったようだ。じわじわくる変化ではなく、急なものである。 加齢によりコーディネートに足し算が増えて、年齢としても許される範囲が広がったのだ、と考えている。 着物は何歳になっても着れるからいいと聞くことがあるが、実はそうでもないことが着てみると分かる。 もちろん何歳になっても着ることができる着物もある一方で、若い頃にしか似合わない、その反対にある程度歳を重ねないと似合わないということもあると思う。 紬の良さがいよいよ身に染みるのも、恐らく身体の変化に従えば、その軽さ故にだと思っている。 紬は元から味わいの良さが好みではあったが、着心地を含めてくると、更に好きが加速しそうである。 またその反対もしかりで、ある程度は我慢してでもしたいコーディネートと言うものも出てくるに違いない。日々着物を着る訳でなければ、お洒落はいつでも我慢と隣り合わせである。 着物の良さは、その年齢を一番綺麗にみせてくれることであるといつも考えている。 決して年齢より若々しくみせるということではなく、今を基準に考えるのだ。 そう思うとコーディネート


手績みの麻
麻の季節がやってきた。 現代、麻というとリネンが一般的だが ひと昔前の日本で麻というと大麻と苧麻(ちょま)が主であった。 以前私は麻などの天然の素材や布を扱うお店にいた事があり「手積(てう)みの麻」は好きな素材の一つだ。 「手積み」とは糸の作り方の事で繊維を細く裂いてその端と端をねじり合わせてつなげ1本の糸にしていくというものである。 大麻や苧麻以外もオヒョウ、藤、しな、葛、芭蕉など日本各地で身近な繊維を手積みで糸にして布を織っていた時代があった。 現代では大麻や苧麻も繊維を綿状にして糸を紡ぐ紡績糸が主流だが、手積み糸は不均一さゆえの深みや味わいがあって染めてもとても面白い。 手積みの苧麻布は現代でも高級なのれんやインテリア、夏物の着物や帯に使われる。 繊維を裂く太さは織る布によるのだが私がのれんで使う厚手の生地だと0,5㎜程、上布といわれる様な薄い着物生地だと髪の毛の半分ほどの太さに裂く。 その端同士をつなげて糸にしていくのだが 例えば90㎝×140㎝ののれんだと必要な糸長が2000m以上、ねじり合わせてつなげる作業が1000回以上 着物一反だ